わたあめ―kimi to hajimete―


『カノ…久しぶりね』



そう言って笑うお姉ちゃんは
どこか悲しげな顔もしていた。



「……っ、お姉ちゃん…っ
会いたかっ………た」



ダメだ…涙が留まらない。


『カノ…』


『カノちゃん。』



「…雅君…。あのね、2人にずっと伝えたいことがあったの。」


そうだ、伝えたかった。
ずっとずっとずっと…
伝えたかった。



『なに…?』


「あの日、ワガママ言って!
頼ってごめんなさい!!…っつ」




『カノ……
私は今、幸せよ?
こちらの世界だけど
彼と一緒だから。』



『僕もだよ。
綾といつも一緒だ。』


「お姉ちゃ……、雅君??」

『カノ…
まだ死んではダメ。』



「嫌!生きたくない!!」


『ねぇ、カノ……
自分から命を絶っては
ダメよ。』



「お姉ちゃん!!
私は……!!」



『カノ、死ぬときは誰かを助けてから死ぬか、老いてからにしなさい。』


『そうだよ。カノちゃん。
まだ、こっちに来ちゃやだな。』


「雅君……」


『カノ、「綾乃」として、
あの店で働いてくれてありがとう。ピアノ上達したね。』



「練習……したもん!!」



『さぁ、カノちゃん、
もう戻りなさい。
和希をよろしくね!
アキちゃんにも伝えてね!!』




体が後ろに引っ張られる。



「嫌だ!お姉ちゃん!!
雅君!!!」



『カノ…幸せになりなさい。』
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