わたあめ―kimi to hajimete―


店の裏口にきたのはいいけど、扉を開けるタイミングがつかめない。

ど、ど、どうしよう!
なんて言えば!?
長い間休んですみません!…………なんか違う。


あれやこれやと考えてもなかなか名案が出てこない。




ガチャン―


扉が開く音がして
中からビール樽を持った川崎さんと視線がぶつかった。

「綾乃……ちゃん?」

ビール樽が手から離れて地面を転がる。

(あ!道路に!!)

慌てて止めた。

あ、危なかった―…

「綾乃ちゃんなの?」

振り向くと、川崎さんに抱き締められた。

「綾乃ちゃん!綾乃ちゃんなのね!!」

「は…い。連絡出来ずにすみません……っ。」

(傷がッ!痛いッッつ!!)

「入院してるって!!
お、男の人が言いに…っ」

和君のことだ。


「川崎さん」

名前を呼んで体を離す。

そこには、涙で目がパンダになっている川崎さんがいた。


「心配をおかけして、
すみませんでした。」

本当に、すみませんでした。

「綾乃ちゃん――っ」

更に泣き出した川崎さんの背中を撫でながら傷の痛みに耐えた。
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