わたあめ―kimi to hajimete―


神田の家に着いたのは、
8時を過ぎていた。


この時間に来て迷惑がられたらどうしよう…。
それに、いくらお礼だからって私からのプレゼントなんて嫌がるんじゃ…。


頭の中がどんどんマイナスになっていく。


(やっぱり帰ろう。)


「香弥乃ちゃんかい?」


突然名前を呼ばれて、
視線をそちらに向けるとそこには神田のお父さんが立っていた。


「あ…、こ、こんばんわ!」

「こんばんは。どうしたんだい?
こんな遅くに。」


何気ない言葉だったけど今の私にはグサッとくる言葉だった。



「遅くにすみません。
あの、これ神田君に渡してもらっていいですか?」

プレゼントの入った紙袋をお父さんに渡した。


(なんか、会いづらい…)

「これは……?」


「あ、今日が誕生日だと聞いていたので……」

「なら、自分で渡した方が……」

「いえ、夜分に失礼しました。」

お辞儀をして、きた道を戻ろうと歩き出した。

「待ちなさい。」

「えっ?」

振り向くとお父さんが
優しい笑顔を浮かべていた。

「上がっていきなさい。
これは、君が直接渡すべきだ。」


なんか…
意外にお父さんって強引??



「あの、じゃあ…
ちょっとだけ……。」

渡したらすぐ帰ろう。


紙袋を受け取って、
神田のお父さんに続いて門をくぐった。
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