わたあめ―kimi to hajimete―


今日のバイトはピアノ。


ドレスを着て支度をする。以前と違うのは傷跡が絶対見えないドレスを着るようになった。肩紐のタイプや背中が開いたのはもう着れない。


「失敗したしなぁ(苦笑)」




コンコン―




扉がノックされて
川崎さんが顔を出す。



「支度出来た??」



「はい。」



「今日、リクエストが入ってるんだけどいい?」



「知ってる曲なら♪」



「じゃあ、これがリストね!」




川崎さんが1枚の紙を渡した。



あ、これ知ってる!



「大丈夫です!」



「分かった。
じゃあよろしくね!」



「はい!」




更衣室を出ると
スタッフが「頑張れ」と言ってくれる。


さぁ、今日もお客様に応えていこう。




ピアノの前に立ち、一礼してから座る。
ピアノに楽譜は置いてない。目を閉じて深呼吸。





私は、橘 綾乃。
ここは、私の晴れ舞台―
< 156 / 237 >

この作品をシェア

pagetop