わたあめ―kimi to hajimete―
こんなの……
ん………。
目を覚ますと空の色が茜色に染まっていた。
ここは、街から少し離れた丘の上にある古びた展望台だ。昔からなにかある度にここに来ていた。
(悪いこと、したな……。)
いつも自分は言葉が足りない。伝えたいことをすぐに伝えることが出来ないから、言葉を伝えることができるころにはみんな自分から離れていった。
(こんな自分、嫌いだ…っ)
思い出したら悲しくなってきた。初夏の風はまだ冷たくて、なんだか淋しくて堪らなくなった。
「やぁっぱり、ここにいた――――!!!」
ビクッ!!
後ろを向くと、そこに仁王立ちしていたのは――
「……っ、アキっっ!!」
駆け寄って抱きついた。
次の瞬間―――
ゴッッッ!!!
いっ……
「いったぁ――い!!(泣)」
拳骨が頭に落ちた。
「このお馬鹿!!なんで連絡しなかった?!!」
(や、ヤバい…。アキに連絡いれてないっ……。)
「ゴメッ…、ゴメンナサイ!!」
「答えになってないっ!!」
「あ、あのね……!」
私は、教室を出た後のことをアキに話した。図書館で神田春哉に会ったことや公園で彼を傷つけてしまったかもしれないことも。気まずくなって、この場所に逃げてきて、寝てしまったこと。
話し終えたときには茜色だった空は真っ暗になっていたけど、アキは全部聞いてくれた。