わたあめ―kimi to hajimete―


「帰らないの?」



えっ??



「帰らないの??橘さん。」


突然声を掛けてきた神田春哉に私は何か違和感を覚えた。



「俺、戸締まりしてくから先に帰りなよ。」



…………!

目を合わせてない!!



普段話し掛ける時は
目を合わせて話す筈なのに、
今は前を向いたまま話しかけてる。



「神田君。」


「何…」


やっぱり振り向かない。

怪しい。


私は、彼の前にいって
目線を合わせた。


そこにいたのは、
いつもの彼ではなかった。
普段の活発な柴犬みたいな彼はいなくて、
暗い顔して、しょぼくれてる柴犬みたいな彼がいた。
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