わたあめ―kimi to hajimete―
もう後3つ先の信号を過ぎると私のバイト先だ。
(これなら間に合う!)
というところで、
思い出した。
(私、今制服だった――)
いつもは、
降りる駅のトイレで着替えていたから気づかなかった。
私は年齢を4つほど誤魔化している。
このまま行ってはいけない。
(着替えなきゃ。)
「止めて!!」
「なに!?」
バイクや周りのエンジン音で声がうまく届かない。
「止めて!!!」
聞こえたのだろう。
彼は路肩に寄せて止まってくれた。
「どうしたの?」
「ここまででいい。
送ってくれて、ありがとう。」
私はなんとかバイクを降りて、彼にお礼を言った。
「どういたしまして。」
にっこり笑った彼は
やっぱり柴犬にみえた。
「それじゃ!」
「待って!!」
踵を返したところで
神田春哉が声をあげた。