わたあめ―kimi to hajimete―
「へぇ、かなり可愛いじゃん♪」
「ねぇ、いくつ?」
「俺らとドライブしよ♪」
口々にニヤニヤ男たちが言いながら囲んできた。
(5人……多いか…。)
私は頭の中でどうやって逃げるか考えていた。
とりあえず店に戻ればまだスタッフの誰かがいるだろう。
でも、ここからなら駅が近い。ただ人がいるのか不安だ。駅員は年配のオジサンだし………。
(どうしよう……)
「おい!シカトすんなよ!!」
顔をあげるとさっきまでニヤニヤしていた顔がイライラ顔になっていた。
私の前にいた男が腕を思い切り引っ張った。
(痛ッ!)
「離して!」
振り解こうともがいてもビクともしない。
「ダーメ!」
腕を引っ張られて車に連れて行かれそうになる。
ホントはやりたくなかったけど………
ガッ!!
腕を掴んでいた男が急所を抑えて前のめりに倒れ込んだ。
(今だ!)
後ろにいた男の急所を蹴って駅に向かって駆け出した。
今ならまだバスに間に合う!
とにかく走った。
でも思うように前に進めない。今日はドレスにミュールだったのだ。
ミュールは足首で固定していて脱ぐことは無理だ。