わたあめ―kimi to hajimete―


「神田君、
この服いつ返したらいい??」


(言い方これであってるかな……)


普段から人との会話を避けてきたからいざというとき何て言ったらいいのか分からなくなる……。

「いつでもいいよ。
あ、お盆は家にいないから無理だけど。」


「それまでには返すよ。
どこかお出掛け?」


「うん。
いとこ達に会いにね。
橘さんは?夏休みにどっか行く予定とか……」


「私は毎日バイト。」



「え…、あの店って確か
お盆は休みだよね??」


「よく知ってるね…。」


(なんでこんな詳しいの……?)


私は話題を変えることにした。



「そういえば、
神田君の兄弟3人ともよく似てるね!」


(ちょっと強引だったかな;)



「それ、マジ勘弁して;
兄貴と一緒にされたくねぇ」



話題に乗ってくれた!


「目元とかお母さん似だよね!
お母さんもとっても素敵だし!」


ホントにそう思った。


「それ、本人の前では言わないでね。
調子乗るから(苦笑)」



「分かった(笑)
兄弟喧嘩も見てて面白かったよ♪」


「あ―…ハズいから
言わないで」



「だって、学校にいるときと全然違うんだもん!
珍しくって♪」



「マジハズい…
ってか橘さんも学校にいるときと全然違うじゃん!」



………!


そうだ!
神田はクラスメートなんだった!!


普段、学校ではかけているメガネも夏休みに入ってからはずっと外している。あれは私にとって見える仮面だったから。


どんどん気持ちが沈んでいく。
あぁ、馬鹿だ。
メガネがないだけで素の自分でクラスメートと話すなんて……。


(ホント私はバカだ…)
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