わたあめ―kimi to hajimete―
「…ったく、今何時だと思ってんだよ…」
この声……神田?
「もしもーし?誰――??」
やっぱり神田だ。
寝起きの苛立った声…。
今は午前1時過ぎ…。
寝てて当たり前の時間。
「ふぁ……イタズラかよ。
切りますよ〜…」
ダメ!切らないで…!!
「……あ、あの!!」
「……誰?」
「た、橘です……」
…………………。
…………………。
「………え?!…橘さん?!」
やっぱ驚くよね……
でも……
「おねがっ……
お願いあるのっ……」
呂律が上手くまわらない。
なんて言えばいい?
こんなとき、どうすればいいの?
もし…、願って断られたら?
いったいどうすればいいの?
「…………助けてっ…!」
(お願い、助けて)
それは…過去に一度だけ、
たった1人の大事な家族のため以外に使ったことがない言葉だった………。