わたあめ―kimi to hajimete―
『魔法使い』こと神田春哉に電話をしてから20分程たった頃、一台のバイクが店の前に停まった。
人影が降りてきてこちらに向かってくる。
「橘さん!……どこ…?」
小声でそう発する声主は神田だった。
「神田…君……?」
「橘さん…!」
来てくれた…
本物………?
そっと手を伸ばして頬に触れてみた…
「橘さん…?……冷たッ!」
(温かい……)
「神田君……?」
涙が零れた……。
本当に来てくれたんだ…
ありがとう……
来てくれて本当にありがとう。
「さ、行こう。
体冷えてる……
これ着て…」
神田は着ていた上着を私に着せてバイクに跨った。
「しっかり、捕まってて!」
そう言って神田はバイクを走らせた。