SとNの法則
やっと今日会えるんだ!
私は後ろの方の席に見える茶色の頭を見つけて胸を踊らせた
だけど世の中そうそう甘くもなく
「くっそ!絶対アレ灘なのに見えないじゃんかー。柊あいつ退かしてきてよ!」
茶色頭の前に座るでかい図体の少年を指差す
おかげでたぶん灘だとおもわれる子が見えかったのだ
「無理言うな」
「ハッ、役立たずめ……ごめんなさい、冗談です」
先ほどの柊のようにしたらおもいっきり鬼の形相で柊様が睨んできたので思わず反射的に謝る
いや、だってまじで鬼かと思った
その後もずっと茶色頭を見つめていたけど前に座る少年のせいで結局顔が見えることはなかった
何の焦らしプレイだちくしょう
やっと終わりかと思えば最後に長ったらしい校長の話
それもようやく終わって新入生が疲れた表情でぞろぞろと席を立ち体育館から出て行く
慌てて私も立ち上がりお目当ての人を探した
人があふれかえっていてよく分からなかったけどそれでも私はひたすら灘を探す
頭を左右に振って辺りを見渡すけど目に入るのは黒とくすんだ灰色だけ
(もう、何処にいんのさ!)
それでも探すのを諦めないのは私が恋する乙女の証拠
だって会いたいんだもん!
「!……な、だ」