紅い記憶
「はい。」


 和樹の態度に思わず稔まで礼儀正しくなってしまう。


「この間は失礼なこと言って、すまなかった。桜があそこまで君たちのことを想っているとは…。正直驚いたよ。もともと人見知りする子だったからね。今、君たちといる桜の表情は生き生きしている。桜にそんな顔をさせてあげられるのは君たちだけなんだろうね。これからも桜をよろしくな。何かあったらここに連絡してくれ。」



そう言いながら、和樹は名刺を差し出す。


「じゃぁ、僕はこれで帰るよ。またな、桜。」


和樹は俺達に軽く手を振ると早々と歩いて行ってしまった。
 


しかし、そんな会話を近くのテーブルでじっと聞いていた女性がいた。


その女性は40代後半の綺麗な人だったが、桜達をじっと見つめていた。

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