紅い記憶

　また、言い伝えだ。

　
　この学校の人間はどんだけ好きなんだと稔は先生に見られないように苦笑した。


「え？言い伝え？」



　当然桜は興味もなかったようで、まったく知らなかった。



「おいおい…月山知らないのか？校門の真正面で告白するとうまくいくんだってよ。月山も誰かに試してみたらどうだ？あぁ、お前には相澤がいるから必要ないのか。はっはっはっは。」



「は…はぁ。じゃぁ失礼します。」



　職員室の扉を閉める。


「ふぅん。言い伝えねぇ。」



　桜は意外にも少し興味を持ったようで一言つぶやいたが、その後すっかり忘れたようにそのことについては一度も触れてこなかった。