紅い記憶
 屋上には誰もいなかった。


 それも当然で、普通なら鍵がかかっていて入れない。


 が、稔は昼休みに屋上でこっそりのんびりするために、鍵の番号をこっそり岸和田から聞き、よくここに一人で来ていた。


 今日も慣れた手つきで鍵を開けて屋上へ出た。



 「あ!今鐘が鳴ってなかった?あと10分だね。」


 星いっぱいにちりばめられている夜空を眺めながら、桜が言った。


「桜…。お前、前より明るくなったよな。」


 しみじみと言った。


「そう?」


「あのさ、他の奴がいる時は無理しなくていいんだけどさ…。せめて俺二人でいる時ぐらいは、そういう明るい顔してろよ。」



「あ…うん。」
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