紅い記憶
その次の日。


放課後、5人で帰ろうとしていた時に、稔は用事があるといって4人と別れ、職員室へ向かった。




向かった先は、竹下春夫のところだった。



「竹下先生、昨日話していた先生の大学時代のこと、詳しく聞かせてもらえませんか。」



稔の意外な質問に竹下は驚いていたが、ゆっくり話し始めた。



「相澤が聞きたいのは月山のお父さんの話かね。」



「はい。」



「本当に君は月山が好きだなぁ。本人に聞けばいいじゃないか。まぁいいか。はっはっは。」




竹下は桜が記憶喪失であることを知らない。稔がただ単に桜のことが好きで興味本位で聞いていると思っているようだった。





「月山のお父さんと僕と岸和田君、宮城君は、同じ大学だったんだ。そして月山のお父さんと岸和田君は新薬開発の研究室だったんだ。4人とも研究室に入りつつ、教員の課程にも入っていたんだが、月山のお父さんは研究の成果が評価され、有名なサイエンス誌に取り上げられた。そのまま有名な製薬会社に就職したんだったかな。そういや、あの時岸和田君は研究発表もせずふらふらしていたんだよ。まったくよく教員なんてやろうと思ったもんだ。」





竹下にお礼を言うと、稔は次に岸和田先生の所へ向かった。
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