紅い記憶
「あぁ、そうだよ・・・。まいったな。相澤の言う通りだ。僕は百合を好きだった。今でもな。だから、百合と付き合っていた当時、百合が急に月山と付き合うからって別れを切り出した時には、頭を殴られたような衝撃だった。理由もすぐに想像できた。しつこく月山が百合に言い寄ったんだ。それで仕方なく、百合は月山と付き合い始めた・・・。」



稔はピンボケした写真を眺めながら宮城の話を聞いていた。



「だけど僕は何も言えなかった。言えるはずが無いじゃないか。百合も少しずつではあるが月山に好意を持ち始めたんだ。そんな百合を見ていたら、せっかくの百合の幸せを壊すような真似はしたくなかった。大切な人が、百合が幸せならそれでいい。それが僕の幸せにもなった。例え百合が幸せになる相手が僕じゃなく、他の誰かであったとしてもな。
だけど、あんなことがあったんだ。無理やりにでも奪い返し、僕と結婚してもらうべきだったかと思うこともある・・・。今頃どうしているんだろう・・。」



稔は宮城に深くお礼を言い、吉永のいる保健室へと向かった。
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