紅い記憶
カラカラと保健室の扉を開けると、吉永は花に水をあげている所だった。


誰かが入ってきた気配に気づくと、目線は花に置いたまま、どうぞと声をかけた。



「俺です。相澤です。」



吉永は水やりを終えて、顔を上げた。




「あら、相澤君。今日は体調大丈夫?」



「はい。ちょっと今日は聞きたいことがあって。」


「あら、何かしら。」



吉永は、治療用の椅子を稔の方へ差し出して、自分の椅子に腰かけた。




「先日お話しした、響子さんと矢野さんについてですが。響子さんのこと、知っていますね?」



「響子・・・知らないっていったでしょ。」



稔から目を逸らす吉永。少し動揺しているように見える。





「そうですか・・・ところで・・・吉永先生って最近再婚したんですか?」




唐突な稔の質問に、吉永はさらに驚いて下を向いた。




「・・・ど、どうして再婚と?」





「いや、吉永先生の左手の薬指、指輪の日焼けの跡が残っているけど、今はめている指輪とは大きさや形が違うようだし。」




稔の観察眼の鋭さに少しおじけずく吉永。しかし吉永は平然として言い返す。


「すごいわね、あなた。そうよ、再婚よ。それが何か?」



「もしかして・・・・これは単なる俺の推測ですが・・・・前の旦那さんて、矢野さんなんじゃないですか。」



「!!!!!」







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