quirk of fate
「さっき居た場所は第一音楽室。ここは第二音楽室。こっちは練習室」
先輩の説明によると、この階の全ての教室は吹奏楽部に割り当てられているそうだ。
僕は先輩の説明を聞きながら、必死に先輩の後を付いて歩いた。
少しでも気を抜けば置いていかれそうだったから。
「あっ、そうだ!」
「うわっ」
先輩が急に立ち止まって、余りにも勢いよく振り向いたから僕は驚いて扱けそうになった。
なんかこの先輩怖いな……
「君、名前なんて言うの?」
「……」
「あ、順序間違えたわね。私は川野美紀。で、君は?」
「牧本咲夜」
彼女はふーんと考え込むように腕を組み、素敵な名前ね!と微笑んだ。
「でも君、先輩には敬語を使いなさい。あと挨拶もね」
「あ、はい」
「分かったならいいのよ」
そう言って先輩は歩き始めた。