quirk of fate
「そう。うちの部では新入生のやりたい楽器の希望を優先してる。あんたは何?」
先輩は長い巻き毛をいじりながらそう言った。
髪の色はほんの少し明るく染まっている。
なるほど。
この程度なら先生も注意しにくいだろう。
そう思いながら僕は言った。
「あの……クラリネットがやりたいです」
「あっ!やっぱり?そうだと思ったー」
「はぁ……」
何を見てそうだと思ったのかが分からない。
確かに、ドラムやトロンボーンは似合わないと自分でも思うけど。
自分自身が作り出す独特の雰囲気に、楽器の似合う似合わないはあると思う。
「じゃ、こっちに来て。そこ座って」
先輩は僕に椅子を持ってきて、クラリネットがパートの新入生達のもとに座らせた。
「この子。クラのパートだから。よろしく」
そう言って先輩は、僕を短く、手軽に紹介した。
そして、すたすた去っていった。
女子ばかりの、しかもある程度は打ち解けているこの輪に放置された僕は、またもや戸惑った。