quirk of fate
「ねぇ?君。一組の牧本君だよね?」
誰かが僕の制服の端をちょんちょん、と引っ張った。
隣に座っていたその女の子は他の子達よりも、一回り小さい。
自分で高校生だと名乗らないと誰も高校生だとは思わないだろう。
「何で僕を知ってるの?」
おかしい……と思った。
大して目立たない僕が、同じクラスでもない子に知られているのは。
「内緒!」
そう言って彼女はふふっと笑う。
「あっ、はい。このクラリネットさっき大倉先輩が持ってきてたよ」
彼女は徐にクラリネットのケースを差し出した。
そういえば、さっき誰かが置いていってくれたような……
「大倉先輩って?」
「サックスの巻き毛先輩」
「あぁ」
僕達は目を見合わせてクスリと笑った。
『巻き毛』で誰か分かるなんて、やっぱりあの先輩の長い巻き毛は、インパクトが強い。
や、髪の毛を巻いてる先輩なんてザラにいるんだけど。
そういえば、彼女の名前……
まだ聞いていないな。
そう思って僕はいった。
「名前は何て言うの?」
「まき。七組の妹尾まき。まきって呼んでね」
「まき?」
聞き覚えがあった。
しかし、何処で……?