quirk of fate
屋上では先輩達が打ち合いをしていた。
新入生はまだラケットを持つことが許されず、球拾いをする。
秋山は一生懸命、球を追っかけて先輩に渡している。
それは、秋山だけではなく他の新入生も同様だった。
僕はそんな彼らを尻目にフェンスの近くに突っ立った。
なんせ部員が多いから別に僕が参加しなくても間に合っている。
むしろ新入生同士の球の取り合いの方が大変そう。
みんな先輩に気に入られたいのだ。
僕の目にはそれが酷く滑稽に映った。
僕はつまらなくなってフェンスにもたれ掛かった。
誰もが僕を怪訝そうに見ている。
そりゃそうだ。
新入生のくせに何もしていなかったら生意気だろう。
けど、そんなことはどうでもよかった。
「おい、球拾わないのかよ」
「え?」
「先輩に嫌われるぞ」
秋山の両腕は球でいっぱいだった。
「別に……いいよ」
ぼそりと呟いた言葉は多分彼には届いてない。