quirk of fate
音楽室に繋がる階段。
さっきよりも色々な楽器の音が聞こえてくる。
僕はゆっくり階段を上がった。
誰かがバタバタ駆け上がってきて、僕の隣を通り過ぎた。
「おはよう!」
「おっおはようございます……」
多分吹奏楽部の人。
余りにも勢いよく挨拶されたから、どもってしまった。
スリッパの色から見て三年生だと思う。
階段を上り終わると、廊下には誰もいなかった。
案内も無しに来たから途方に暮れてしまう。
どうしよう……
兎に角、何処かの教室に入って誰かに喋りかけなければ。
ふと一番奥の教室を見ると小さな影があった。
人……だよな。
その影はだんだん僕に近づいてくる。
僕は影を瞠った。
夕日に輝く髪。
赤いカチューシャ。
大きな瞳。
それは
美しい少女だった。