quirk of fate


少女はだんだんと近づいてくる。


僕は訳も無く胸が疼いていた。


なぜだろう?


異様に心臓が高鳴る。


身体全てが心臓になった気分だった。



あっ……すれ違う。



彼女の、


肩までの髪がふわりと揺れる。


優しい香りがした。


シャンプーやリンスーの香りではなく、


少女自身の香りのような気がする。



少女もこちらを意識しているようで、


何処と無くぎこちがなかったけど、


決して目を合わせようとしなかった。



足音が遠くなって行く。


僕はそのまま阿呆のように呆けてしまった。


どの位かは分からなかったけど、


誰かが僕の肩を叩くまではそのままだった。




< 8 / 13 >

この作品をシェア

pagetop