quirk of fate
恋心
「で?」
「え?」
「何の楽器がやりたい?」
数分前、
女の人に話しかけられた。
彼女は自分が吹奏楽部の部長だと名乗って僕を部室に導いた。
「それほど、楽器は揃ってないけど……あっ、金管と木管を決めるのが先ね」
「金管と木管?」
「そう。例えばクラリネットは木管、トロンボーンは金管」
大雑把な説明だなと思いつつ、僕はテニスコートにいた時に聞こえてきた音色を思い出した。
あれは……確かクラリネットだった。
あの音に導かれてここまで来たんだ。
「クラリネット」
「クラリネットがいいの?わかった。じゃあ行こう」
先輩はそそくさとスリッパを履いて部室を出て行く。
僕もその後に続いた。