星に願いを


「・・・・牧野 陽向くんの容態ですが・・・」


医者の声が聞こえた。


ナースステーションのすぐ隣の水のみば。
顔を洗う手が止まる。


「陽向は、どうなんですか?」



この声はお母さん。


荷物取りに帰るんじゃ・・・


「陽向くんは原因不明の吐血と、意識が戻りません。
このままだと・・・目覚めないまま・・・」


ドクン


「そんな!
陽向を助けて下さい!」



「お母さん・・・酷な話ですが・・・。
医学には『不明』なものを治療する手だてがありません」


医者も泣きそうな声だった。
お母さんは叫ぶような声だった。




『セピアワールドで待つ』



真っ白の頭の中に

その言葉だけがこだましていた


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