あたし彼氏。オレ彼女。
ニコッと微笑んだ郁に油断した。
「約束だからな」
―ちゅっ
「っ! 郁依っっ!!」
皆がいる教室で郁はあたしの顔を引き寄せてキスをしてきた。
触れるだけの軽いキスだったけど、甘いキス。
『…やったら……キスしてあげる……』
いくら郁の上目使いに負けたからって、こんな約束するんじゃなかった。
たまに男っぽくなる郁は格好良すぎる。
普段が可愛く見えるから…。
だからその余裕のある顔が憎たらしい…。
「…ばかっ」
「ん〜?何か言ったぁ?」
「別にっ!!
とっとと宿題やりなよ!」
あたしが怒鳴ったと同時に郁は駆け足で自分の席に戻った。
この時はまだあたしも郁も…誰も知らなかった。
まさか、あんなことになるんて。
このあと、誰にも予測出来ないことが起ころうとは知らずに…。
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