IJ探険隊
島の伝説
「なぁ、麻。知ってる?」

夏休みの宿題を教えて欲しいって言うから来たのに、さっきから口の止まる様子がない。

「ねぇ、聞いてる?」

「勉強習うために呼んだんじゃないの?」

そう言うと、はぁ。と溜め息をつき、
「だってお前の言ってること、意味不明。
それよりさぁ、俺の話も聞いてるのか?」

「俺、勉強してるから。」

「っな、もう聞けって!
通り池の伝説、知ってるだろ?」

「あぁ、知ってるけど、それがどうした?」

通り池の伝説‥。
それは、片方の池に、血の繋がりがない子供を突き落とそうとして、間違って本当の子供を落とした‥。
それに気付いて、もう片方の池に自身の身を投げた‥みたいなヤツだったと思うけど、今更そんな話を持ち出されても、大昔の通り池の伝説を知らない人なんて、この島にはいないよ。
敦司は昔からこの手の話が好きだ。馬鹿馬鹿しい。

「それがな、最近それに似た事件が起きたんだってよ。
通り池で。」

「噂だろ、第一、そんな事があったらニュースにでもなってるよ。」

「チッチッチッ
そんな事ニュースにでもしてみろー、誰がこの島に観光に来るー?
噂ではな、観光局の奴らが揉み消したらしいぜ。」

ニタリ、と口端を上げて怪しげに笑う敦司。

「はぁ、そんな事より勉強しろよ。中二にもなって勉強の一つも出来ないのか?おまえは。」

そう言って、数学の教科書で頭を叩くと、はいはい、と、けだるそうな返事が帰ってきた。


いつもテスト寸前に泣き付いてくるくせに、その偉そうな態度はなんなんだ。

まったく。
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