Devil's Kiss
父さんは元々転勤族で。
私が生まれる前は特に国内色々異動してたらしい。
それでも私が物心ついた時には転勤のての字も見当たらない感じだった。
割と栄えた街のマンションで父さんと母さんと私は親子3人仲良く暮らしてた。
平々凡々、事件が起きたとしたって家の中を高速に這う黒いあの虫の退治とか。
言葉通り平凡な家庭。
平和な家庭だった。
母さんが、ある日体調を崩すまでは。
『すぐ良くなるよ』
病院に母さんを見舞いに行った帰り、そう言った父さんは笑顔だった。
だけど、その日の夜中。
リビングのソファーに座る父さんは苦しそうに泣いてた。