みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
いや、ウチにも姉と妹がいてるけど、そこまでの覚悟はできてへん。
各務兄妹の場合は、もともと一人の人間として生まれるはずやったんが、分かれて二人として生まれてきた“双子”やさかい、フツーの兄弟なんかより、兄弟愛が何倍も強いんとちゃうやろうかとウチは思う。
「別々の中学に通うようになって、いっしょに遊べる時間もほとんどなくなったけん、アイツ、今日のこと、何日も前から楽しみにしちょったんやけど……」
呆然と一葉の画像を見つめてはる彼。
「一葉……助かるよね?」
各務くんは黙って唇を噛み締めるだけで、ナンも答えてくれへん。
「一葉、ウチに“ごめん”って言うてたんやろ? 死んだらウチに謝れへんやん?」
「そうやな……救急車で運ばれちょる途中で、一度意識を取り戻したとき、アイツ、よっちゃんに“ごめん”ってうわごとのように何度も何度も言っとったし、一葉もキミに謝るまでは死んでも死にきれんのやないかな……」
「そーやで。ちゃんと謝ってもらうまで、死んだりしたらゼッタイ許さへんで」
「うん。さっきまではオレとオヤジと二人しかおらんかったけど、今はよっちゃんが来てくれて三人もおるんやけん、三人分の祈りを込めれば、一葉だってひょっとしたら……」