みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
せやからウチは全然気にしてへんフリをして、明るい感じでそないに答えてあげた。

「でも、あんときは……あんとき、オレはコノ病院の待合室でキミの治療を待ちながら、ホントに頭がどうにかなりそうやったし……もし、そのキズがずっと消えんやったら、オレが責任とって、一生よっちゃんのお世話をするつもりやったとぉ……」


「各務……くん……」


ウチにとっては遠い過去の思い出の1ページにすぎひんことやけど、あんとき彼がまさかそこまで決意してくれはってたなんて、ウチは夢にも思わへんやった。


もしかして……もしかして、あんときから彼はいつも、自分の不注意からウチの顔にキズを付けてしまったことに罪の意識を感じ、自分を責め続けて、ほんでお互いがオトナになってからの将来のことまで考えていてくれはったんかも。


やとしたら……やとしたら、彼の気持ちも知らへんで、彼からの恋文を無視してしもうたウチはホンマ最低の女やと思うわぁ。



「あんときのことやったら、ウチ、全然怒ってへんし、そもそもアレは各務くんのせいちゃうよ……むしろ謝らなアカンのはウチのほうや」

「え……?」
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