みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
そうかて、こないなことでもあらへんやったら、ウチはもう一生、彼と会うことなんてなかった思うさかい。


…やとしたら、一葉にはなにがなんでも回復してもらわな困る。

ちゃんと彼女に謝ってもらいたいし、ウチもちゃんと彼女にお礼を言いたい。



「なんだ……まだ治療は続いてるのか?」

そこに席を外してくれてはった兄妹の父親が帰ってきた。

「私も医者のはしくれのつもりだが、実の娘の危機を目の前にして、なにもしてやることができないのかと思うと、自分の無力さにハラが立ってくるよ」

「父さんは歯医者やけん、ここは専門分野の先生たちに任せて、とにかくオレらは一葉の回復を祈るったい」

「そーだな、一樹のいうとおりだな」


それからはおしゃべりも一切やめて、ウチと各務くんと彼の父親は黙って、一心不乱に一葉の回復を願った。



ほんで―――



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