みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
三人で祈りはじめてから、いったいどれくらい時間が経った頃やろうか、それからだいぶん経ってようやくICUの扉が開いた。



疲れ果てたような表情で中から出てくる医療スタッフのヒトたち。

「先生、娘はっ? 娘はどうなんですかっ?」

詰め寄るような勢いで、スタッフのうちの最年長らしきヒトに聞く各務兄妹の父親。

「一時は危険な状態もありましたが、もう大丈夫でしょう」

先生の穏やかな微笑みがウチらをイッキに安心させた。

「ありがとうございますっ。先生にはなんとお礼を言ったらいいかっ」

「礼ならお兄さんに言うことですな」

「え……一樹ですか?」

「救急隊員の話によれば、彼らが現場に到着したときには、すでにお兄さんが妹さんの人工呼吸をしてくれていたそうで、今回の妹さんの回復はなんといっても、その初期対応の早さよるところが大きいと思いますよ」

「一樹。お前、人工呼吸のやり方なんてよく知ってたな」

「ま、まぁね」

父親に言われて、照れくさそうにポリポリと後ろ頭をかく各務くん。
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