みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
「前に海に行ったとき、自分のせいで友達に大ケガばさせたことがあるけん、今度もし海に行くようなときは、ゼッタイ自分が救っちゃろうと思って、ネットで調べて人工呼吸の方法はしっかりマスターしちょったけん」
「…って!?」
そっか。あんとき、ウチの頬にキズを付けたことを反省して、二度と同じ過ちを繰り返さへんように準備万端で海に行ったってことか。さすがは各務くんやなぁ。
そないなふうに彼の行動を感心するいっぽうで、頭の中ではボーイッシュな一葉の唇に、美少年の各務くんが人口呼吸でくちづけしたり、彼女の胸を両手でギュウギュウ押してはるビジュアルが浮かんできて、こないに感動的な場面ですら腐女子的なBL妄想を抱いてまう自分が心の底から情けなかった。
ほんでもウチがこないな妄想を膨らませられるんも、一葉が助かったことで緊張がほぐれたからやと自己弁護をしてみる。
「順調にいけば数日中には一般病棟に移り、再来週の週末頃までには退院できると思いますよ。では」
そう言って去っていく先生の背中に向かって、ウチと各務くんと彼の父親は、三人そろって「ありがとうございました」を言うた。
ほんで深々と頭を下げながらオツムん中では、各務くんともなんとか仲直りがでけたような気がするし、今度は一葉と仲直りする番やな……なんて思っとった――――