みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
昨日、先生は「もう大丈夫でしょう」って言うてくれはったのに。
これが現実ってもんなんか?
マンガやと、どない大ケガしたり、重い病気にかかっても、家族や友達の祈りの中で、ヒロインは奇跡の復活を遂げることがでけるのに、ヤッパ所詮は空想の作り話ってコト?
“人間なんて、こない簡単に死んでまうもんなんや……”
ウチは愕然とした。
ウチの両親はお互いの親ん反対を押し切って、駆け落ち同然で結婚したさかい、両親ともに親戚付き合いものうて、ウチ自身、祖父母の死に目に会ったこともなく、身近なヒトが死んでまうっていう現実に対して、経験も免疫もまったくあらへんやった。
ニュースで毎日のように事件や事故で亡くならはる人のこと見聞きしとっても、“死”というものを現実の出来事としてリアルに実感することがでけへん。
せやからウチは頭の中が真っ白になってもうて、どないしたらええのかホンマに分からんようになってもうた。
ただ一つ、あーしておけばよかったと思う後悔はある。
“こないなことになるんやったら、もっと早く一葉と仲直りしておくんやった……”っていう後悔や。