みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~



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その夜、各務くんから一葉のお葬式の日程についての連絡があったんやけど、ウチは「ふん……ふん……」と生返事だけを繰り返しとったような気がする。

ハナからお通夜にも告別式にも行く気はあらへん。

ウチの頭の中には元気やった頃の一葉のビジュアルがちゃんと録画されとる。

それやのに、そこにお葬式の映像なんかを重ね撮りなんかしたぁない。

そないなことしたらウチは一葉の死を認めたことになる。

彼女の死体をちゃんと自分の目で見ぃへん状態にしとけば、“最近あまり姿を見かけへんけど一葉はどっか遠くに行ってはるだけなんや”って自分に思わせることがでける。


たとえ15歳の一葉のピチピチの若い肉体が火葬場で焼かれて、まるでフライドチキンを食べたあとの残骸のような骨だけになってもうたとしても……、

ほんで、戸籍上、彼女がこの世に存在せぇへん人間になってもうたとしても……、

それでもウチは一葉が死んだとは思いたぁない。認めたくないんや。
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