みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
「おはようございます!」
…と元気な女の子の声が聞こえてきはった。
ウチがトイレの前から玄関に向かおうとすると、それより先に父・健(タケル)が「はーい」とドアを開けてもうた。
「おはようございます!」
「おはようさん。一葉ちゃん、今日も元気やね」
「それだけが取り柄やけん♪」
「美佳は内気で人見知りをするさかい、中学に行っても一葉ちゃんと同じクラスになれて、ホンマによかったわぁ」
普段は気づけへんけど、よぅ“京都弁”と“博多弁”でうまいこと会話してるな~と感心することがときどきある。
まぁ、京都弁と博多弁は方言のクセして、全国で通用する言葉やさかいなぁ。
「ボク……いや、あたしも美佳と同じクラスで嬉しかです♪」
「そうな? これからも仲良うしたってや」
「はい、兄がおらんことなったけん、これからはあたしが美佳を守るとです」
「よろしゅう頼むわ。オーイ、美佳、早ようしぃや、一葉ちゃんが待っとるでぇ」
玄関から大声で叫ぶ父。