みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

なんや知らんけど、急にウチの頭にええ考えが浮かんだんや。


「全体の構図を考えたのはウチ、ほんで実際に絵を描いたんは一葉ってことで、つまりアノ絵は二人の合作で、最優秀賞はウチら二人がいっしょにもろうたってふうに考えたらええんちゃうかな?」


「そっか……いいな、そん考え方、すごく前向きで。一葉も二人で受賞したと思えば、少しは気がラクになると思うったい」

そんとき、さっきまでウチに対する申し訳なさからか、硬くこわばっとった各務くんの表情が、フッと緩んだように見えた。

「よし、じゃあ、世の中的には、あんとき賞をもらったんは一葉のまんまやけど、今日この瞬間からウチと各務くんの中では、ウチと一葉がダブルで最優秀賞を受賞したっていうことこそが、真実やから」


「分かったとぉ。ヤッパ二人っていいな?」


「え?」

「一人だけで考えちょると、人間、同じところの堂々巡りやけど、二人でそれぞれ違ったアイディアを出し合えば、違う方向に進むことができるったい」

「そうやね。一人やないってなんかええ感じやね」


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