みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
「そんならオレら、二人いっしょの高校に行こうや?」

「えっ……二人いっしょの高校に!?」

「よっちゃん、志望校は?」

そう訊かれたウチは、あまり偏差値の高くない私立高校の名前をあげた。

「よかったら、ソレ辞めて、オレといっしょに“芸短附属”に行かんとぉ?」


芸短附属ってゆうのは“芸術短期大学付属高等学校”のことであり、その高校は絵画や造形なんかの美術や、音楽・声楽などを志す学生が集まるところで、卒業生はみんなソッチ系の大学に進学し、各分野でプロのアーティストになってはるヒトもけっこーいる県内でも有名な高校や。

「そうかて、各務くんと違ってウチ、頭が悪いさかい、各務くんと同じ高校なんか受けてもゼッタイ受かるわけあらへん」

恥ずかしいことやけど……。

「なら、オレがよっちゃんの家庭教師になっちゃるばい。善は急げや。早速、今日から夏期講習をはじめるとするったい♪」

「きょ、今日からって……ええの? ウチ、各務くんが想像してるよりずっとずっとアホやさかい、きっと迷惑かける思うし……」

遠慮がちに言うウチ。

彼が家庭教師になってくれはるのはもちろん嬉しいに決まっとったけど。
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