みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
彼女は小学生の頃から、毎朝学校に行くとき、ウチを家まで迎えに来てくれてた。

…ってゆーか、厳密に言うとアノ頃は一葉ひとりだけじゃなく、各務兄妹が二人いっしょにそろってたんや。

実は一葉には“各務一樹”っていう双子の兄がおったんやけど、彼は今、市立中学に通うウチら二人とは別に、一人でバスに乗って附属中学に通うてた。


なかよし三人組の一人が欠けたことへの淋しさはある。

ほんでも、各務くんからの告白を無視してしまったウチにしてみれば、今は顔を合わさんですむんが正直気持ち的にラクやった。

一葉はウチらの間に何があったのかは全然知らへんみたいやったし、知ってるのかどうかイチイチ確認して“ヤブヘビ”になるのもカンニンしてほしかった。


「お姉ちゃん、まだっ? もう、漏れてまうってーっ!」

ドン、ドン、ドンッ!!

トイレのドアが壊れるんじゃないか、ってくらいにチカラいっぱい叩くウチ。

この春から中学に通うようになったっていうのに、中学生にもなってオシッコ漏らすなんて、ありえないにもほどがあるわぁ。

「ウルサイなぁ。…ったく、アンタにも便秘のツラさを思い知らせてあげたいわぁーっ」
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