みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
ウチはこの町で中学生になり、姉はこの町で女子大生になった。

もし、父がまた異動になるようなことがあったとしても、姉だけはこの町に残って一人暮らしを続けはるんやと思う。

別にどーでもええことやだけど……。


とにもかくにもや。

引っ越しの度に、なかよしの友達を離れ離れになるゆうことの繰り返しがイヤになってしもうたウチは…、

“こないにツライ思いをするんやったら、もう金輪際(こんりんざい)二度と友達は作らへんっ!”

…って固く心に誓ったんや。


ほんで、ウチの唯一の友達は、いつでも、どこでも、好きなときに、好きなだけ向き合うことがでけるマンガだけになった。

たとえ住む場所が変わっても、マンガの中でならいつでも恋かて、友情かて、冒険かて、なんだって体験でける。

マンガが友達になってからとゆうもん、もともと絵を描くのが得意やったウチは、ヒマさえあればノートの片隅とか教科書の余白とか、ありとあらゆるところにイラストを夢中で描きなぐるようになった。

…ってゆーか、もはや自分の意思とは無関係に紙の白い部分を見つけると、手が勝手に動いてしまうくらいの感覚やった。
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