みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
せやから、その後、彼女ンちにお邪魔したとき見せてもろうたマンガコレクションは、ちーとしたマンガ喫茶並みの規模があって、それを気前よう無期限で貸してくらはる彼女は、ウチにとってホンマありがたい存在やった。
ちなみに“ブックアウト”というんは本やCDなんかのリサイクルショップのコト。
「なぁ、一樹、ちょっと来ちゃりぃ。このコ、絵がちかっぱ上手かけん」
ウチのイラストに感動したのか、ちょっと興奮気味の一葉が、その場でピョンピョンとジャンプしながら手招きをする。
「えっ、ほんなこや?」
彼女に呼ばれてウチの机のほうに、左足をちょっと引きずるようにしながらやってきたんは、透き通るように色が白うて、頬からアゴにかけてのラインがまるで少女マンガの繊細な美少年みたいな男の子。
色が白いせいもあるんやけど、顔の各パーツの配置がベストな感じで、ヘタな女の子なんかよりはよっぽど“美人”な男の子やった。
彼の名前は“各務一樹”。
一葉の双子の兄や。せやから各務くんと妹の一葉はまったく同じ顔をしてはる。
はじめて会うたとき、左足を少し引きずるような彼の歩き方がちーと気になったんやけど、その後、ふとしたことから彼の左足が“義足(ぎそく)”やちゅうことに気がついた。