みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
ショートカットのボーイッシュで双子の妹の一葉に呼ばれ、義足の左足を少し引きずるような歩き方で、ウチの机のほうまでやってきた、透き通るような白い肌を持つ女の子顔の美少年・各務くんは、ウチのイラストを見て、驚いたような声を上げはった。
「なぁ、一樹とどっちが上手いとぉ?」
「オレとは絵のタッチがちがうけん、どっちが上手いとは言えんけんど」
「この子に一樹の絵を見せてやったらいいやん?」
「そうやな」
そう言って、彼が1度自分の席に戻って、手さげ袋の中から取り出して持ってきてくれた“じゆうちゅう”には、いろんなマンガのキャラクターたちが描かれていた。
そのどれもに共通していえるこというたら、フツーにイメージする小学生レベルの画力を、はるかに凌駕しとるちゅうことや。
「なっ? 上手いやろ~?」
まるで自分のことを自慢するようにニコニコしながら一葉が言う。
たしかに上手い、
くやしいけど……。
自分の画力にそれなりの自信をもっていたウチにしてみれば、嫉妬してしまうくらいのイラストやった。