みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
「おはようございます」
「おはようございまぁーす」
校門の前に竹刀を持って立っているジャージ姿の若い男のヒト=帯刀(タテワキ)先生にあいさつするウチと一葉。
彼は毎朝校門で風紀検査をしてはる。
聞いたハナシやと、なんでもご先祖様は江戸時代の寺子屋の先生らしいて、それ以来、親子代々、先生という由緒正しい家柄いうことで、現在このヒトのお兄さんも東京の高校で先生をしてはるとのこと。
ほんで、帯刀先生はウチらのあいさつに対する返事として…、
「オイ、お前、ちょっと待て」
…なんて言葉を返してきはった。
「ボク?」
そない言うて一葉が自分で自分を指差す。
「お前じゃない。髪の長いほうのお前だ」
一葉はボーイッシュなショートカットやさかい、“髪が長いほう”いうたらウチのことや。
「えっ…う、ウチですか…?」