みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
「目の前にこうして動かぬ証拠があるのに、お前はいったいどのクチで言い訳しようとしてるんだ」

そう言って、ウチのクチの端っこからほっぺたにかけての顔の皮膚をグニュッと思いっきりつまみあげる先生。

「い、痛たい、って…!!」

コレって、ひょっとしてプチ体罰!?

ホンマは、ちゃんと理由を説明すれば、髪が赤いことの誤解はすぐに解けるはずやった。

せやけど、朝からいきないプチ体罰をされてしまったウチの心の中は、見る見るうちにドス黒い恐怖の色で塗り染められて、怖くてなんも言えへんようになってしもうた。

「………」

せっかく喜んで中学に入学したのに、入学早々、あらぬ誤解で不良少女扱いされてしもたのかと思うと、その悲しみが、頬をつままれてる痛みとあいまって、ウチの目の奥をチクチクさせてきて、そのあと、すぐに涙があふれ出てもうた。



「ちょっと待たんね!!」



そのとき、突然、一葉が声を張り上げた。

そのあまりの大声に登校してきた生徒たちが、何事かと一斉に注目しはった。

< 28 / 142 >

この作品をシェア

pagetop