みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
今朝も今朝とて、姉に自宅のトイレを占領されたんは真実。せやけど、今オシッコに行きたいちゅうのはまるっきしウソや。
ほんでも前を押さえて、内股気味に走ったのは、下半身が緊急事態になっとる演技をしてみせるためやった――――
× × ×
いつもなら6年2組の教室から一番近いトイレ――つまり3F北のトイレを使うんやけど、1秒でも早う恋文を開封したかったウチは、最寄りの1F先生用トイレに駆け込んだ。
さいわい中には誰もいなくて、個室のドアも全部開いとった。
もしココで運悪く先生の誰かとハチ合わせでもしようもんなら、朝から小言のひとことも言われとったとこやと思うけど、とりあえずはラッキーってカンジや♪
バタンッ!
個室のドアを素早う閉めると、ポケットからグシャグシャになった恋文を取り出して広げるウチ。
乱暴な感じで、手でちぎって開封すると、中には1枚の便箋と1枚の映画のチケットが入っとった。