みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
涙声でウチが言う。
「おう! おらん一樹んぶんまで、美佳はボクの守るけん、もし誰かにいじめられたりしたら、すぐにボクに言いないや」
「うん……」
ウチはそう言うと、まだあふれ続けている涙をハンカチで拭いた。
ホンマ……ホンマに一葉はどこまでオットコ前なんやろ?
彼女が男の子なら、ウチは間違いなく一葉に惚れてる。
神さまのイジワル!
各務兄妹をこの世に創造しはるとき、なんで一葉も男の子にしてくれへんやったん!!
このときウチは、彼女が男の子やったらよかったのに、と心の底から思うた。
“あ~ァ、どっかにいてへんかいな? 一葉みたいな男の子……”
そない思うた次の瞬間、オツムの中に彼女の双子の兄である各務一樹の顔が浮かんだ。
“おるねんな……身も心も男の子ヴァージョンの一葉が、ちゃんと、この世に……”
そうかて彼にはもう逢えへんし、逢えへん理由はウチ自身が作ってしもうた―――――