みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
ホンマはウチかてソッチに付いていきたいんやけど、母には負担をかけたないし、せめて高校を卒業するまではガマンするしかあらへん、って覚悟はしとる。


でも、まぁ、ホンマどーでもええことやさかい、ハナシを元に戻すわぁ。



“各務歯科医院”には院長である一葉の父親のほかに、もう一人若い女の歯科医師がいてはって、ほんでウチと一葉は同時に診察室へと呼ばれたってことや。

それぞれ診察用の椅子に座ると、歯科衛生士の女のヒトに、ヨダレかけ(?)を装着してもらうウチと一葉。

そして一葉には院長……つまり彼女の父親が、そしてウチには若い女の歯科医師がそれぞれの担当になった。


「ホントんごつ、お前はバカチンったい」


白衣を身にまとった一葉の父親がほとほと呆れ果てたような感じで言うのが、診察椅子をひとつはさんだ隣りから聞こえてくる。

某学園ドラマで福岡出身の先生が「このバカチンがぁ」なんて言うのを聞いたことはあるんやけど、ホンマにリアルなネイティブのヒトが言うのを聞いたのは初めてやった。


「もォ……昨夜から何度も何度も同じこつばっかり言わんでほしいかよ」
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