みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

ちなみに仕事以外のプライベートの話をすると、各務兄妹の部屋にはクーラーがのうて、熱帯夜でも窓を開けて、扇風機をつけて寝らなアカンらしい。

まぁ、ドケチやないと、お金持ちになんてなれへんのかもしれへんけど、一葉の父親の奥さん……つまり彼女の母親も、彼のそんなケチケチぶりに嫌けがさして離婚してもうたみたいで……。


そないな話を聞いて以来、それまで開業医の子供に生まれてきた彼女のことを、心のどこかでやっかんでたウチも、これまで以上に親近感を覚えたゆーか、より深う仲良しになれたような気がしとった――――



      ×      ×      ×



それから1年が過ぎた5月のある晴れた日のこと。

その頃、父は同じ福岡県内とはいえ、クルマで片道1時間30分以上かかる店舗の勤務に変わってたんやけど、ウチはこれまでどおり同じ中学に通い、2年生に進級しとった。

アラウンド30の女美術教師・辺見(ヘンミ)に引率されたウチら2年3組の生徒たちは、おしゃべりをしながらゾロゾロと、学校近くの神社の境内へとやってきとった。

「はい、みんな注目ゥ~」

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