みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
彼女がパンパンと手を叩くと、ざわついとったウチらは、黙って注目した。

「今日はこの神社で写生をします。好きな風景を見つけて絵を描いてください。上手に描けた人の作品は今度の絵画コンクールに出品しますので、みんな頑張っていい作品に仕上げてください。じゃあ、解散」


その言葉を合図に一斉に散らばって分かれるウチのクラスの生徒たち。


ある生徒は神社の社(やしろ)を描いてはる。


またある生徒は庭の草花を描いてはる。


またまたある生徒は石灯籠を描いてはる。


そしてウチはといえば……、

2年に進級しても、またまた同じクラスになった一葉といっしょに、鳥居から少し離れたところに並んで座って写生をしとったんや。



スケッチしながらふと見ると、そこに各務くんがいて一瞬ドキッとしてまう。

せやけど、それは一葉の顔なんや。

各務くんが附属中学に、そしてウチと一葉が市立中学に通いはじめたのは、もう1年以上も前の去年の4月のことや。

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